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Obsidianのマルチデバイス同期、なぜいつも微妙に遅いのか

iCloudやDropboxのクラウド同期は便利ですが、「今ちゃんと同期できているか見えない」「競合コピーが増殖する」という小さなストレスがつきまといます。ファイル単位のクラウド同期と、コミット単位のGitの違いから、この「微妙な遅さ」の正体を整理しました。

以前「Obsidianが最強のツールだと思う理由」という記事で、複数端末を跨いでシームレスに使えると書きました。実際、iPhoneでもiPadでも同じvaultを開けるのは便利です。

ただ、正直に言うと、この「シームレス」には小さなノイズがずっと混じっています。PCで書いたメモを、その場でiPhoneから開くとまだ反映されていない。少し待ってから開き直すと今度はちゃんと入っている。実害があるわけではないのに、地味に気を使う場面が積み重なっていきます。今回は、この「微妙な遅さ」の正体について書きます。

「今、同期できてるの?」がわからない

Obsidianのマルチデバイス対応は、多くの場合iCloud DriveやDropbox、あるいはObsidian Sync(有料オプション)のようなクラウド同期サービスに乗せる形で実現します。これらは裏側で自動的に動いていて、ファイルを保存すれば勝手にアップロードされ、他の端末でも勝手にダウンロードされます。

便利な仕組みなのですが、ここで気になるのが「今、同期が終わっているかどうかが、こちらからは見えない」ということです。アイコンがくるくる回っていれば同期中だとわかりますが、それが具体的に何のファイルを扱っているのか、あと何秒で終わるのかまではわかりません。ネットワークが不安定なときや、vault内のファイル数が多いときは、この「見えない待ち時間」が体感として伸びます。

結果として、「もう同期できたはず」と思って別端末を開いたら反映されておらず、慌ててその場で同じ内容をもう一度書いてしまう、ということが自分にも何度かありました。運が悪いと、両方の端末でほぼ同じタイミングで編集してしまい、ファイル名 (競合コピー) のようなファイルが増殖していたこともあります。

遅さの正体は「単位」の違いにある

なぜこうなるのか、自分なりに整理してみると、同期の「単位」に理由がある気がしています。

クラウド同期サービスは、基本的に「ファイル単位」で変更を検知して同期します。Obsidianのvaultは、使い込むほどノートの数が数百・数千と増えていきます。小さなMarkdownファイルが大量にある状態で、どのファイルが変わったかを都度検知してアップロード・ダウンロードするのは、思っている以上にオーバーヘッドがかかる作業です。しかも「いつ検知して、いつ同期を始めるか」はサービス側のタイミング任せで、こちらでコントロールできません。

一方、エンジニアがコードの管理に使うGitは、同じ「複数ファイルの変更を複数端末で共有する」問題を、まったく違うやり方で解いています。「変更をコミットとしてまとめる」「pull/pushというアクションを自分(またはツール)が明示的に行う」という発想です。

この違いは地味に見えて大きいです。クラウド同期は「常時裏で動いていて、いつ終わるかわからない」のに対し、Gitは「今、明示的に同期のアクションを起こした」という区切りがはっきりしています。「今ちゃんと最新か」を確認する手段が、感覚ではなく操作として存在するわけです。

コンフリクトの「見え方」も違う

もう一つ気になっていたのが、コンフリクト(競合)が起きたときの体験です。

クラウド同期で競合が起きると、多くの場合はファイル名 (競合コピー 2026-08-06)のような別ファイルが黙って生成されます。元のファイルと競合コピー、どちらが正しい内容なのかをこちらが見比べて判断する必要があります。しかも、この競合コピーが生成されたことに気づかず放置してしまうと、同じ内容の重複ファイルがvaultにどんどん溜まっていきます。

Gitの場合、競合はファイルの中に<<<<<<<のようなマーカー付きで、両方の変更内容がその場に埋め込まれる形で提示されます。別ファイルが増えるのではなく、「このファイルのこの部分で、こういう変更がぶつかっている」ということが1箇所で完結して見えます。決して快適な体験ではありませんが、少なくとも「何が起きているか」を追いやすい設計だと感じます。

この発想をノートアプリにしたのがMarten

この「Gitのやり方をノート管理にも使えないか」という発想を形にしようとしているのが、今開発しているMartenです。GitHubをデータの置き場にする、マルチデバイス対応のMarkdownノートアプリで、アクセスのたびにGitHubから最新の状態を取り込み、変更は明示的にコミットとして反映する設計にしています。

まだベータ版で、クラウド同期サービスほど枯れた仕組みではありません。ただ「同期がいつ・何を対象に行われているかを、ユーザーから見えるようにする」という方向性そのものは、Obsidianを複数端末で使い続けてきた自分の実感から出発しています。

GitHubアカウントさえあれば無料で試せます。ベータ期間中は、簡単なアンケートに答えるとPremium機能が永年無料になる早期登録特典もあります(特典期間は2026年9月20日まで)。「あの微妙な遅さ、地味にストレスだったな」と思い当たる方は、覗いてみてください。